明るい闇に包まれて/由比良 倖
 
今深く吸い込む息と共に死ぬ


キスをする過ぎゆく秋の弔いに


電話越し雨降る音を声にする


街灯をむなしく映す窓の雪


重力に負けたわたしに雪が散る


椅子を引く音も冷たい冬の朝


立ち止まる街がゼリーになっていく


冷えた靴そっと誰かの影を踏む


この橋を渡ればわたしに会えるのに


「死ね」という言葉も甘い冬の夜


この街を出られる鍵を持つわたし


「また明日」今日だけは死ねなくなった
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