心の濃度/由比良 倖
 
長らえてふと懐かしい部屋の壁


月曜日、仏壇に蝿が来ている


ひとつだけ秋空に乞う生きる意味


鬱の字で冷えたカルテを陽が包む


詩や歌と同じ濃度の息を吸う


カーディガン一枚羽織るだけの朝


忘れないこの街の恋のこの速度


前髪がこの世の風に揺れている


冬の匂いまたどこまでもひんやりと
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