シマノフスキーの調べ/吉岡ペペロ

現代音楽のようでいて
懐かしい旋律も現れたりする
シマノフスキーにはそんなピアノ曲が多い
冬の夜に近い朝
外灯は暗い空に圧されるように
地に貼りついていた
柔らかな天地の香り
宇宙から与えられたぼくの肉が
ひそかな歓喜になじんでゆく
職場に向かう者たちは
あるいは家路を辿る者たちは
きっとこの連帯を感じていることだろう
シマノフスキーのピアノ曲が
深夜よくラジオから流れていたことがある
昭和さいごの冬だった
シマノフスキーを聴きながら
あのときも連帯を感じていた
人一倍悲しいことがあったくせに
不器用で世間知らずのぼくだったから
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