火のリレー/吉岡ペペロ
 

決勝戦の日

その朝早く

正吾はひとりで甲子園に来ていた

四年まえの占い師の言葉が嘘でなければ

きょう、俺は、甲子園の優勝投手になるはずだ、

高速道路の屋根のしたを歩いて

蔦のからまる球場に近づいていった

沼岡や、

チケットを求めて徹夜していた親子が

正吾に気がついたようだった

子供がかけよってきた

子供からは夏の匂いがした

湿気てはいるけれど

すこし涼しい風が

正吾のまわりを弱く吹いていた

正吾は子供と握手をしながら

空からちぎられて降ってくる

黄色いひかりを見つめていた


正吾と田島がいま一番つよく思っていることが

かならず、実現する、

四年まえそう言った
[次のページ]
戻る   Point(1)