春を待ちわびて/みぎめ ひだりめ
 
身がうずむほど雪が降った
ささくれだったヒイラギの枝が
きしんで首を垂らしている
穏やかにその生命を垂らしている
槍のような葉先が ひどく艶やかに
朝霧を すんと突いていた

火を焚べている
白姫君に覆われたさなかの野に
あわい赤点が光っている
瞬きのように満ちている
洋杯に満たした飴湯が
とぽとぽと冷気に溶けていて
そういうのを わたしは眺めていた

あれだけ待ち遠しかったこの冷たさも
ひとたび味わえば 凍えた指先を火にかざして
そのすぐに
ああ あたたかな春が来ればいいな
などと思っている
息を吸っても すぐに吐き出したくなるような
急いた強欲さを持ち続けている
はやく明日になればいいな
そんなことばかり思っている

身を刺すような 冷たい風が吹いた
白雪とわずかな痩木の黒色が
なにも変わらずにそこにある
穏やかにその生命を剥き出している
指の芯をじわじわと温めながら
冷たくなっていく洋杯を握りながら
わたしは それでも遠くを見つめるように
こがね色の火端を眺めていた
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