歌響/ひだかたけし
 
病棟のベットでぼうっとしている私
四人部屋のお隣さんは
ラジオを鳴らしながら歌っている

私は揺れる緑の仕切りカーテンを見る
空調の送り込む風にゆっくり揺れ
お隣さんの歌声は続いている

カーテンはゆらゆら揺れ
緑の色彩の棚引く様、見入るうち
やがて私はベットの上で独りになる

意識の安らぎ力の漲り
何か圧倒的な存在感覚 、
意識の輪郭の鮮やかに浮き立ち
在るもの全てと繋がり合う如くに

歌い続けるお隣さんの
声の高低と幅や旋律リズムに
私の意識の声も重なり合い
ハーモニーを奏で響かせ

ゆらゆら揺れ続ける緑を撫で優しく

時の淵を深く深く形づくり

もう誰も何もかもが私のなか、

閑やかな歌声を響かせ木霊させて




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