抒情詩 ?/岡部淳太郎
 
この世はすべて抒情詩。人々が右だの左だのそれぞれ
の勝手な席に座っている間、俺は翼のない旅をつづけ
ている。翼がないということは飛べないということで
あるが、右でも左でもどちらか片翼だけでも飛べない
のは間違いないところだ。俺は翼のない旅をしている
ゆえ、ゆっくりとではあるが、確実に歩いている。こ
の世はすべて抒情詩であるから、それを意識して、俺
は歩きつづけている。それからこれまでになかったよ
うな早い苗が植えられてそれに危機感を持った人々が
左の席から文句を言っているが、そんなこともすべて
は抒情詩の風景として通り過ぎてしまう。結局この世
のすべては抒情詩なのだから、この
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