Alice/月乃 猫
冬が
にじみはじめ、
すべての あらゆるものを
灰色に染めあげる、
陶器の カップをおく音に
ためらい
振り返る
キッチンのテーブルに妹がいた
久しぶりに見る姿
うつむいた テーブルクロスの
格子の つなぎ目に落とす視線は、
静かで、
いつもの
淡い色のセーター 母が手編みの
妹のお気に入り
――― 元気でやっていますか
随分と 久しぶりですね
そうと 分らぬくらいの小さくうなずき、
会話は いつもの一方通行で、
答えを期待しない
わずかに口元を上げるそのしぐさで、
微笑みの 妹の気持ちを量り知る
――― 山里
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