稜線/たもつ
 


水の稜線をたどると
椅子の肘掛けは
今日も閑散としていて
グラウンド整備を終えた
儚い高校球児のように
窓ガラスから先へと続く金魚に
適量の餌をあたえた

息に触れようとして
色を間違えることがある
その度に
ゆっくりと一から数えて
手を止める仕草をする
保土ヶ谷の小さな歩道
すれ違う女性が
泣いているように思えた
答案の字が薄いと
先生からお話があった時も
ふと雨の降り始めの匂いがして
先生から少し離れた外の方では
雨が降り始めていた

鼻濁音のきれいな人に憧れていた
それがもう
誰かはわからないけれど
図鑑に描かれた様々な色を
日暮れまで眺めている
わたしはそんな子供だった
餌を食べた金魚が身を翻して
遥か水の中へ消えていく
多分あれは
わたしの手から
すり抜けていったものだ


戻る   Point(4)