地獄ヶ淵/栗栖真理亜
 
深まる闇に誰も気付かず
忍び寄る足音にも誰も耳を傾けようともしない
偽善の仮面を被った悪魔は聖職者の身形で白々しく
神の言葉を説いて回る
まるで我こそが真の聖職者なりと虚栄心を募らせながら
混乱と猜疑心とはますます深まり
心に鞭打たれたような痛みと苦しみもますます消えず
混沌としたこの世が消えることなく続く

自分達の逝くべき方向すら定まらぬ限り
さ迷う人々の群れが道を外れて堕落する
神は手を差し伸べる事もせずに無常にもお見捨てになるだろう
それが人の定めであるかのように
硫黄の雨が降り天地が真っ二つに引き裂かれても
罪は免れず朽木の十字架背負い暗がりの盲人達が行進する
道すがらも行き着く先も蕀であることを知りながら

逝き場も出口もない無限のループが彼らを迷わせ困窮させ
全く見出だせない価値を両手に捧げ持つ現在(いま)
地獄の淵は口を開けて待っていた
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