許さない/栗栖真理亜
 
穏やかな時間
静かに雨が降る
過去に熱線で焼かれた街が
いまは優しい顔で観光客を迎えている

あの地獄は夢だったの?
七十九年前の悪夢が私の肌を
焼き尽くしたのに

「水を・・・みずをください」
川は紅く染まり
人々は折り重なるように倒れていった
浮かばれない想い
無念さが美しかった街に溢れた

私は決して忘れない
八月六日午前八時十五分に起きた哀しみを

人は過ちを繰り返し、人を傷付ける
国の利益と支配欲に取り付かれた悪魔が
罪なき人々の営みを平気で消し去ってゆく

私達は許さない
決して許さない
まだ幼いこどもたちの笑顔を
苦しみ悶える姿に変えた戦争を
私は決して許さない
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