青い果実/栗栖真理亜
決して堕ちまいとして必死に樹木の枝にぶら下がる青い果実
一口かじればまだ硬くて甘酸っぱい味がする
それは吹き荒れる嵐に抵抗しようとする証
真っ直ぐに太陽を睨みつけ世間に己れの存在を知らしめようと
自ら印象を刻み込む炎
燃やす命をまだ見ぬ未来に託し畏れと不安を大地の鏡に映すたびに
長く伸びた枝が危なげに風で揺れる
この切なげなため息を誰が聞き咎めようか
溢れる輝きの刹那に消えゆく真の美しさを何人も見い出せぬならば
どんな景色も色褪せてしまう
もし、陽射しを孕む容貌を割り裂き
滴る果汁を搾り出したならば
厚い皮に阻まれた憂いの種子を知る事となるだろう
戻る 編 削 Point(1)