ある寒い春の日/ホロウ・シカエルボク
 

長ったらしい名前の紅茶の缶が窓のそばで錆びてた、それがいつからそこに在ったものなのかなんてまるで思い出せなかった、ほとんど何も知らないままで過ごしていたのだ、自分が欲しい明日のことばかり考えて―今夜、地球は冷たかった、ずっと昔からそうしてぼくの身体を冷やし続けているような気がした、いつだって気がするだけだ、ほとんど何も知らないままで過ごしていた、彼女が幸せを演出しながら胸の中に何をしまっていたのか、とか、紅茶の缶は時の経過を赤子のように抱いて僕を断罪していた、気付くことが無意味だと思えるくらいそれは過去の中だった、そして僕はそのほとんどを何もしないまま忘れようとしていたのだ、デジタル時計が示す
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