空白の響き/海
体温のある指が動いた瞬間
偶然はコードの隙間をすり抜けた
予測の網に絡まない影が
ディスプレイの向こうで揺れている
無数のデータが川のように流れ
その中で一粒のハートが跳ねると
赤らんだ誰かの声
アーカイブされていない情報が
画面にに刻まれると光が瞬いて
乱数の中から顔が浮かび
ハッとする
偶然はノイズと呼ばれ
人工知能はそれを嫌うけれど
君と私の間に落ちた一瞬は
回路の外で息をしている
言葉が交錯し
アルゴリズムが迷子になり
誰かがクリックする微かな音が
この出会いを閉じないまま
果てしない空白に響き合う
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