あたらしいもの/形代 律
 
あたらしいものなど何もない
失われて
失われゆく幾十年

あたらしく見えたものは
全部他人のお仕着せだった

地平線を
見たことがあるか
都では地平線が見えない

わたしの住む千住の界隈でも
この頃は
古い家が崩れて
あたらしい高層の家が建つ

庭の木を大事に育てていた
腰の曲がった婆さんはどこに消えたのか
あとから現れたのは
写真のように均斉の合った
土の匂いのない
父と母とその娘

娘はまわりの灌木ほどの背丈もないが
銀の板を片手に
意のままに光と音をあやつる
魔術にすでに長けている

わたしには
他人がゼロとイチの素材で編んだ
リサ
[次のページ]
戻る   Point(5)