あたらしいもの/形代 律
あたらしいものなど何もない
失われて
失われゆく幾十年
あたらしく見えたものは
全部他人のお仕着せだった
地平線を
見たことがあるか
都では地平線が見えない
わたしの住む千住の界隈でも
この頃は
古い家が崩れて
あたらしい高層の家が建つ
庭の木を大事に育てていた
腰の曲がった婆さんはどこに消えたのか
あとから現れたのは
写真のように均斉の合った
土の匂いのない
父と母とその娘
娘はまわりの灌木ほどの背丈もないが
銀の板を片手に
意のままに光と音をあやつる
魔術にすでに長けている
わたしには
他人がゼロとイチの素材で編んだ
リサ
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