石ころ/あまね
石ころになりたかったんです
道のはしっこで
誰の目にもとまらないように
ときどき蹴飛ばされても
誰のことも恨まないような
ちいさな石ころになりたかったんです
たいせつな物は思い出の中には何もなくて
空っぽの心は
いつも何かが妬ましくて
焦がれる感情を押し殺しては
何も感じないふり 考えてないそぶり
どこにも手は届かないんです
ちいさな陽だまりがありました
十月のささやかな午後みたいな
もうすぐ死ぬ虫たちが集まって
まどろみの途中で そのまま終われたら
いいね なんて
さみしくないよ なんて
言い交わしている
ずっと夢の中です
生まれてからずっと
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