土の重石(つちのおもし)/みぎめ ひだりめ
もうしばらく帰ってはいませんが
わたしの こころは
いつまでも 故郷の山にあります
あの頃の 濡れた土の匂いが
わたしの こころに
ゆっくりと 層をつくるのです
ずざ ずざ ずざ ずざっと
懐かしい ばあやの手と共に
漂うような 音が聞こえるのです
時は流れ わたしも随分 歳を取りました
柔らかい土が いつか固くなるように
老いた手の 乾いた皮膚のように
不自由なこの 身体のように
わたしのこころに 積もった土は
重く 確かなものになりましたよ
それを見つめては 目を細める毎日です
わたしは
わたしという 存在は
器を置き去りにして
いつか
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