2024年秋/形代 律
 
生きものを傷める
永い夏は終り
エノコログサは緩み安堵のやわらかさで
午後の風に踊る

一本一本でありながら
一帯そのまま総体の伸びやかさで
秋空を仰ぐすがた

空は
宇宙の闇と光の混交の色彩である と
わたしは考える

その日
或るひとはアメリカの大統領選に身を硬くする
別のひとはあたらしい生命の誕生に
蕩ける程の充溢を味わう

日も時も
ほんとうは存在しないらしい

宇宙に包まれた
砂礫のように微小の星のおもて
海は鳴り
土はほぐれ
山は鎮まり
ざわめきながら流れてゆく川 その傍で
エノコログサは
この瞬間を踊る

眺めている
自我のさかい目を風がなぞるたび
痺れて立ち尽くす
ひとのわたし
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